最強王子とフェンス越しの溺愛キス
ズキン、と心に亀裂が入ったように痛む。
だって、噂されて傷つくのは私がよく分かってることなのに。私なら、その気持ちをわかってあげられるのに。
それなのに皆と同じように、噂に翻弄されてしまった。
情けなくて、つい俯いてしまう。
「ごめん、生吹くん。私も、他の人と変わらないね。生吹くんを噂した一人になった……」
だけど生吹くんは、私を否定した。「それは違う」と。
「美月は違うよ。他の人と全然違う」
「違う?ど、どこが……?」
「だって噂のことで謝ってくれるのなんて、美月だけでしょ?」
ニッと笑う生吹くん。
胸がドキッと高鳴るのを知らないふりをして、私は生吹くんから顔を逸らした。
「謝るなんて。そ、そんなことで、皆と違うなんて……っ」
大げさだよ、と言おうとした矢先。
逸らしたはずの生吹くんの顔が、私の目の前にあった。
ドキッ
綺麗な顔に今日何回も覗き込まれて。
私はその度に、胸を高鳴らせて。
「(なんで、こんなにドキドキするんだろう……っ)」
綺麗な顔だから?
ピンチの私を救ってくれた救世主だから?
それとも……生吹くんだから?
「あの、生吹、くん……?」
新しく買った服にシワがつくまで、ギュッと握る。それで私の鼓動を抑えたつもりでいる、けど。
無理だよ……。
本当は全然、抑えられてないっ。
ドキンドキン
「……っ」
生吹くん、私の心の声。
聞こえて、ないよね?