最強王子とフェンス越しの溺愛キス
ビクリと私の体が反応したのを、生吹くんは感じ取ったらしい。
「ね、言ったでしょ?おんぶしててちょうどいいって」
「は、はい……っ」
大人しくなった私が面白いのか、生吹くんが「ふっ」と笑みをこぼす。その時に背中が少しだけ、心地よく揺れた。
「月、綺麗だね」
「あ、ほんと……。満月だね」
「うん、美月みたいにキレイだ」
「っ!」
生吹くんの言葉が、頭にこだまする。脳内で何度か反復した後に、そのセリフは別の人の声で再生された。
『綺麗な満月。まるで、美月みたいだねぇ』
「……」
急に心が重くなったみたいで、体を起こすのをやめる。ポスッと、生吹くんの背中に頭を預けると、生吹くんは「ん?」と短く尋ねた。
「生吹くん、私ね」
聞いて欲しい事があるの。
私の昔話だからつまらないだろうけど、
生吹くんには聞いていてほしい。