最強王子とフェンス越しの溺愛キス
そう伝えると、生吹くんは頷いてくれた。
「聞かせて、美月の事」
夜空に透き通るような、生吹くんの凛とした声。
この人になら全てを話しても大丈夫――
自分の鼓動が速くなるのを感じながら、私は目を閉じてポツリポツリと話し始める。
生吹くんは何も言わず、ただ黙って耳を傾けてくれていた。
◇
私が幼稚園に通っていた時に、家族三人で乗っていた車は事故を起こした。相手はトラックで、信号無視をしたようだった。
正面衝突した車。トラックにぶつかれば乗用車はひとたまりもなく、両親は即死だったらしい。
チャイルドシートに固定されていた私は奇跡的に無傷で、消防隊に車から引っ張りだされて大泣き出来るくらい元気だった。
だけど。
その時、私は見てしまった。車から流れ出る、両親のおびただしい血を。
「そこから、赤い血が……苦手になったの。どうしても事故の日のトラウマを思い出してしまって」
「そうなんだね」
「新島に攫われた時も、その事を思い出しちゃって……。ちょうど公園で休んでいた時だったの」
「今も体調悪い?大丈夫?」
「今は、平気だよ」
ありがとう、生吹くん――
生吹くんの背中に耳を当てる。トクトクと、生きている鼓動が聞こえる。