最強王子とフェンス越しの溺愛キス
生吹くんは、相槌を打ちながら聞いてくれる。私は話を続けた。
「施設長は愛情込めて私を育ててくれたのに、誕生日にわざわざそんな事をお願いするなんて……。私は、どれだけ残酷な人間なんだって思って。
ある時から、施設長とは気まづくなっちゃった。気を使えばつかうほど、上手くいかなくなって。だから、高校入学と同時に一人暮らしを始めたの」
まるで、逃げるように――
そこまで話した時、生吹くんがポツリと呟いた。
「122450――12月24日、50歳の誕生日。この数字が無くてはならない美月のパスワードって知っただけで、施設長は嬉しいと思うよ」
「え」
「いつか会いに行こうよ。施設長に。会いたいんでしょ?美月」
「む、無理だよ……っ」
手を振って、否定する。
だって、本当に逃げるように出てきちゃったし……。向こうだって、私が顔見せに帰ってきたら戸惑うだろうし。
「(会いたい、けど……。
会う勇気が出ない……っ)」
下唇を噛み締めて地面を見た時。月光で出来た自分の影が目に入る。