最強王子とフェンス越しの溺愛キス
「昔……私が寝られない時。施設長は私が眠るまで、よくお話してくれた。
部屋から見える満月を見つけては、
“ 綺麗だね、美月みたいだね”って言ってくれて……嬉しかった」
私を綺麗って言ってくれる事がじゃなくて。
私が眠るまで側にいてお話してくれた事が、何よりも嬉しかったの。
「私の勇気が出て、もし施設長に会えるなら……たくさんお礼を言いたい。
いつもそばにいてくれて、ありがとうって。大好きだよ、って。
満月を見る度に、そう思うの――」
たくさんの昔話をした、その日。
私は部屋に一人帰り、電気も付けずに、真っ暗の中カーテンを開ける。
そして今も尚、光を注いでくれる満月を見ながら、また静かに目を閉じるのだった。