最強王子とフェンス越しの溺愛キス
「え?ねぇ、生吹くん。今、俺の傘下に入るって言った?」
「言いました」
「それは、つまり……
Moonという暴走族に入るって事?」
「はい」
「嘘だろ、本当に?」
重ね重ね質問した藤堂さん。
その狼狽ぶりから、生吹の言った事が信じられないんだろう。
「(気持ちは分かる)」
生吹は、新島からLunaに入らないか勧誘されてるらしい――と俺がいつか藤堂さんに話したことがあった。
『彼の反応は?』
『うぜぇ、の一点張りですよ』
『だろうね』
【⠀春風生吹は最強と言われているのに暴走族には入らない⠀】
これは、界隈では有名な話だ。だからLunaに入らないのも頷けた。
だけど、生吹は言った。
Moonに入ると――
「信じられない。あの生吹くんが、ウチの族に?素直に嬉しいよ。戦力増大どころじゃない。特攻隊長にうってつけだ」
ニヤリと笑う藤堂さん。
だけど「でもね」と、次の瞬間には真顔に戻った。