最強王子とフェンス越しの溺愛キス
「俺がMoonに入る理由はただ一つ。好きな子を守りたい。それだけです。
俺のせいで美月はLunaに狙われている。だから反対勢力のMoonの力になりながら、彼女を守りたい」
「(生吹……)」
生吹の覚悟を決めた顔を初めて見たし、何かに一生懸命になるコイツも、初めて見た。
「(お前、美月ちゃんの事を本気で好きなんだな……)」
俺が妙に感心していると、藤堂さんが「へぇ」と、椅子に背を預けて腕を組んだ。
「案外アツい所があるんだね。それに、正直に理由を言ってのける所も好感が持てる。
確かにMoonとLunaは仲が悪い。最近はLunaの暴走をMoonが止める事があるくらいだ。
だから、もし無実の少女がLunaに狙われてるなら、俺たちはそれを守る義務がある」
藤堂さんも、何だかんだ美月ちゃんの事を保護する方向で話を進めるらしい。
その答えを聞いて、生吹は少しだけ肩の力を抜いた。ように思えた。俺にしか分からない変化かもしれないが。
「助かります。俺が守ってやりたい、けど、他校だと限界がある。常に美月の側にはいてやれないから、藤堂さんが美月と同じ学校にいてくれると安心します」
生吹から「美月」と連呼されるのを聞いて、藤堂さんは「ちょっと待って」と手をちょこんと挙げた。
「その美月っていう子、もしかして……」
「へ?」
「魔女と噂されてる立花美月……?」
少し顔を青くして話す藤堂さんに、生吹は呆れたようにため息をついた。