最強王子とフェンス越しの溺愛キス
「じゃあ、今日はここでお開きにしよう。
あ、そうそう。生吹くんが最初に言ってた“ 真白”という子だけど」
「!」
ガタンと、生吹が忙しなく反応する。それを見た藤堂さんは眉を下げて、申し訳なさそうに笑った。
「ごめんね、その子の事は知らないんだ。
何一つね――」
◇
「お前、良いのかよ」
「何が?」
「真白って子の情報掴めなかったのにMoonに入って。入り損だろ、確実に」
ファミレスからの帰り道。予告通り、会計は生吹に支払ってもらい、退店する。
バイクの藤堂さんとはそこで別れて、現在俺たちは帰路に就いている。
俺からの質問に、生吹は「あー」と声を漏らす。そして夜空に浮かぶデケー満月に向かって、呟くように言った。