最強王子とフェンス越しの溺愛キス
「……っ」
「美月ちゃん?」
不思議そうな顔をする生吹くん。
私は――いけないと知りながらも、逃げる足の力を抜いた。
「すみません……何でもないです。
お腹、空きましたねっ」
急に話を変えた私を見つめる生吹くん。
だけど、私に合わせてくれて「そうだね、食べよ」と笑った。
「今日はコレ、持ってきた」
「え、これ……椅子?」
フェンスの下と地面の、僅かな隙間から。生吹くんは小さな折り畳み椅子を、私へスライドして寄越した。
広げると、私一人が座れる。もちろん、生吹くんは自分のも持ってきていた。
「これなら、並んで食べられるかなって」
「わざわざ、持ってきて、くれたんですか……?」
「ん……そうだよ」
そう答えた生吹くんの顔は、少し照れくさそうで。
照れているのを悟られたくないのか、生吹くんは大きな音をガシャッと立てて椅子に座った。