最強王子とフェンス越しの溺愛キス
「俺の事は小太郎って呼んでください!」
「わ、わかりましたッ。でも……呼び捨ては慣れないので、くん付けでも良いですか?」
「ぐ……っ!美月さんが輝いて見える!天使すぎます、その笑顔!」
「え……」
その日の帰り道――
藤堂先輩の言う通り、放課後は生吹くんではなくて汰生さん……じゃなくて、小太郎くんと帰っている。
だけど私の頭の中には、あの生吹くんがチラついていた。
「(なんだか元気がなかったなぁ……)」
生吹くんとは今日もお昼を一緒にしたけど、なんだか上の空な気がした。
『ねぇ生吹くん、大丈夫?』
『え、なにが?』
『なんか元気なさそう。それに、今日はずっと、ウチの校舎を見てる気がして……』
『……そう?気のせいだよ』
そう言ってニコリと笑った顔が、やっぱりどこか元気がなさそうに見えた。
気になる……すごく。
だけど、
「あー!美月さん!ネコいますよネコ!」
「! ふふ、ほんとですね」
生吹くんの事が胸に引っかかりながらも、私は今、笑っていられる。
それは、きっと小太郎くんが私を元気づけるように、明るく話しかけてくれてるからだと思う。