最強王子とフェンス越しの溺愛キス
その姿に、少しだけ親近感を抱いた私。
突っ張った心の糸を少しだけ緩めて、微笑みながら生吹くんを見る。
「ありがとうございます。
私も……座ります」
椅子に座って、並んだ二人。
向かい合わせに座るのは恥ずかしいから、生吹くんと同じ向きにして、椅子に座った。
すると、生吹くんは私を見ないままポツリと漏らす。
「俺は、楽しみだったよ。今日」
「え」
「美月は?違うの?」
「ッ!」
流し目で、下から覗き込まれた。瞬間、ドキリと心臓が音を立てる。
綺麗な真っ黒な瞳に、私の胸の内を見透かされているようで。
嘘をつけず、誤魔化すことも出来ず――
ただ、本音を話す。
「楽しみ、でした……すっごく」
「……そっか」
私の答えを聞いて安心したように、生吹くんは袋の中からパンを取り出す。
私は、家にあった別のお弁当袋に入れて来たお弁当の蓋に、手を掛けた。
「毎日お弁当?」
「はい。作るのは、苦じゃないので」
「え。まさか美月が作ってるの?」
「か、簡単な物しか作れませんが……っ」
目を開いて感動されたので、急いで訂正する。
だって、本当に簡単な物しか作れないから……。