最強王子とフェンス越しの溺愛キス
「やぁ、よく来たね。生吹」
「お待たせしました、藤堂さん」
美月ちゃんと小太郎が初めて一緒に帰っていた、その同時刻。
学校の外にて、俺は「生吹の用事」に同伴していた。
「今日は放課後を潰してしまって悪いね」
「いえ、俺が無理を言ってMoonに入れてもらったんですから」
「歓迎会なんて事は出来ない。が、顔見せの場くらい設けたいと思ってね」
君がMoonに入ったと知れば、皆は両手を挙げて喜ぶだろうから――
そう言うと、生吹は「そうですかね」と呟いた。俺と目を合わせない。
「(何か裏があるのか?)」
顔が怖いくらい整っているからか、表情が全く読めない。だから言葉で生吹の心情を推察するしかない。
「(あの生吹が暴走族に入るってことが異例だ。生吹は美月ちゃんのためと連呼していたが、本当にそうなのかどうか……。
確かめる必要がある)」
生吹、悪いな。
お前の用事と言っておきながら、本当は俺の用事に付き合ってもらっているんだ。
一族へのお披露目、という名の、
生吹の偵察をさせてもらう。