最強王子とフェンス越しの溺愛キス
だが――
「すみません、俺からは言えません。美月に直接聞いてください」
「へ?」
教えない、ってわけじゃないのか?
「あの番号は美月にとって、気軽に口にできる番号じゃないんです」
すみません――と、もう一度謝った生吹を見て、溜飲が下がる。
たぶんこいつは、俺の事を、そしてMoonの事を信用している。
同時に、本当に美月ちゃんの事しか頭にない事も分かった。
「あの春風生吹が、こんなに一途とはねぇ」
無意識に口にしてしまった言葉に、生吹は顔を歪めて俺を見た。
「だから藤堂さんに話したくなかったんですよ。美月のこと」
「と、言うと?」
「皆に隠してる俺の素顔を、藤堂さんは簡単に暴いてきそうで……なんか嫌」
「……っぷ!」
笑いがこみ上げる。
確かに「総長」や「最強王子」と噂されている生吹の実情が、こんな純情だったら――
肩透かしもいいとこだ。