最強王子とフェンス越しの溺愛キス


「って、そう言ったんだよ」



言いながら、持っていたジュースをポイと生吹に投げる。

生吹は流れるように片手で受け取り「あざす」と浅く礼をした。



「一輝はここに遊びに来る可愛い後輩って感じだけど、今日は雰囲気違ってマジな感じだったからさ。

それに、一輝が藤堂さんの名前を出すなんて今までなかったし。よっぽどの事なのか?って、さっきまで皆と話してたんだ」

「そうなんですか?藤堂さん」

「あ、うん。そうだね。一輝は俺が総長代理になって、ちょっと変わったからね。俺の名前を保険に使うなんて、かなり珍しいよ」



俺がいない時に、絶対アジトに来ない一輝が。

俺が総長代理になった途端に、急にかしこまって敬語で話すようになった一輝が。


暗躍して、皆を丸め込んだ。

俺の名前を使って。

友達を守るために――



「だから俺たちも一輝を信じることにしたんだ。だからお前を見た時に”総長”なんて思わなかったぜ?

仲間になれて嬉しいぜ、生吹!」

「は、はは……ありがとうございます……」

「(固まってる。珍しい)」



生吹のレアな姿にクスッとしながらも、別の人物の事も頭に浮かんでいた。

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