最強王子とフェンス越しの溺愛キス
「すみません、先に行きます」
「っ、あぁ。わかった」
生吹が走り出したのを見て、俺は号令をかける。
「集合!!」
ツルの一声。
俺の言葉を聞いた仲間は、座っていた奴も寝転んでいた奴も、瞬時に起き上がる。
三秒もかからず、椅子やソファを蹴っ飛ばして一列に俺の前に並んだ。
「一同、ここで待機。
連絡来るまで動くな、いいな」
「「「!」」」
仲間は俺の顔を見て察した。今日ではなくても、この先――近いうちに抗争が起きると。
安寧に過ごしていた日々が、生吹を紹介した途端にガラリと変わる。
それは言葉を変えれば、生吹が災厄を持ってきたとも読み取れるのに、
「「「了解!!」」」
仲間たちは笑顔で、そして決して足元がふらつくことなく、
いつ訪れるか分からない「その瞬間」を待つようだった。