最強王子とフェンス越しの溺愛キス
「美月!美月おきて、美月!」
「んぅ……?」
知った声に起こされて、目を開ける。
そこは、部屋の一室のような場所。暗くて、狭くて、逃げ出したくなるような閉鎖感。
窓はなくて、扉は一つだけ。
「なに、ここ……っ」
ゾクッと、足元から恐怖が這い上がってくる。
だけど、
「美月、安心して。一人じゃないよ」
「!」
隣を見ると、真白ちゃんがいた。ギュッと強く、私の肩を抱きかかえてくれている。
だけど……
「ま、真白ちゃ……顔っ!」
真白ちゃんの口元から、血が流れていた。
もう乾いているようだけど、見るだけで痛々しい傷。口が切れて、赤く腫れている。
そして――赤い血。
「ま、しろ、ちゃ……っ!」
瞬間、脳内が真っ白になる。だけどジワジワと、ある風景が浮かび上がった。
「(これは、交通事故の日の……っ)」
潰れた車、隙間から流れるおびただしい血、そして動かない両親――
「うぅ、ぅぅ……っ!」
歯を食いしばり、頭痛に耐える。
気持ち悪さで吐きそう……!