最強王子とフェンス越しの溺愛キス
「美月」
「ッ!」
ふわっと。
冷え切った私に、温かい体温が降り注ぐ。
そして心地良い、聞きなれた声。
「(間違えるはずない…生吹くんっ)」
目を開けて振り向くと、生吹くんが私を抱きしめてくれていた。
「い、ぶき……くん……っ」
「遅くなって、本当にごめん」
私の目に映ったのは、いつもの綺麗な顔の生吹くん。
どこも怪我をしてない生吹くん。
血も、怪我もしてなくて、ホッと安心する。
だけど、それ以上に。
「……」
「美月?」
心の中で一度諦めた人。
もう二度と、この人の前に姿を見せまいと決意していた。
だから……
いざ本人を目の前にすると、どうしていいか分からない。
「生吹、くん……っ」
この人にまた会えたという喜びが、
また一緒にいられるという幸せが、
私の中で溢れてしまって、どうしたらいいか分からない。