最強王子とフェンス越しの溺愛キス
「さ、最悪だ……っ」
慌てて追いかけるも、時すでに遅し……。
フェンスに、私の手の付け根まで入れても、届かない。
「はぁ……仕方ない。諦めよう」
ため息一つ、漏らした時だった。
「これ、取ったらいい?」
低くも高くもない、だけどよく通る男の人の声が、私の耳に届いた。
「え……」
気配はまるでなかった。
だけど男の人は、フェンスを挟んで私の目の前にいる。
いつ、ここに来たんだろう。
全然気づかなかった……。
「これ弁当袋?
こんな所で食べてたの?」
「え、あ……」
男の人は、袋を持って私に近寄る。
だけど聞かれたくない事を聞かれてしまって、思わず俯いてしまう。
旧ゴミ捨て場で、一人ぼっちでお昼を食べてるなんて。例え他人であっても、恥ずかしくて知られたくない。
だから、返事が出来ない。
無言を貫いてしまう。
だけど、それ以外にも口を開けない理由があった。
それは……