最強王子とフェンス越しの溺愛キス
「アンタに任せて大丈夫なの?」
すると純也先輩は――顔に浮かべた笑みを消す。
私から視線を外して生吹くんを見た瞬間に、顔つきが変わった。
「武術を習得した真白が僕を頼るって意味――君なら分かるでしょ?」
「!」
「それに、君に心配される筋合いはない。
いい子に回れ右して、美月を外へ逃がすんだ」
「……本当に見かけによらず、だな」
苦笑して返した生吹くんに、今度は純也先輩も笑った。
「はは、よく言われるよ!
あ、伊織もココに来てるんだよね?後で合流するから、なおさら心配しないで。
それより――
君は美月ちゃんを、早く逃がした方がいい」
「……どういう?」
純也先輩が生吹くんに耳打ちをする。
小さな声で交わされた話は、まだ呆然としている私の耳には入ってこなかった。
だけど、純也先輩は何を言ったのか――
「……ご忠告、どうも」
生吹くんは、踵を返してサッと部屋から出てしまう。
私は抱えられながら、純也先輩を見てペコリと頭を下げた。