最強王子とフェンス越しの溺愛キス
純也先輩は、私を見て笑っていた。
その時、先輩の足元に、完全にのびている新島がいるのを初めて目にする。
「(血……っ!)」
新島の体のあちこちから出ている血を見て、パッと視線を逸らす。
だけど部屋を出てから廊下を進んでいる間も、何人もの人がのびていて……
皆、色んな所から血を出して倒れていた。
「(赤、血……っ!
いや、やめてッ!)」
ギュッと目を瞑ると、生吹くんが私の変化に気づいてくれた。
私が不安定になっているのを察し、目を瞑るように促す。
「何も見ないで、目は瞑ったままで。できる?」
「う、ん……っ」
だけど、一度にたくさんの血を見てしまった私は……
一周回って、もう、血から目を逸らすことが出来なくなってしまった。
「はぁ、はぁ……っ!」
「美月っ。俺を見て、美月!」
浅い呼吸を繰り返す私。
目の焦点は合わず、自分でもどこを向いてるか分からない。
私の意識は霧がかかったように、朦朧とし始めた。
「美月!」
繰り返し名前を呼んでくれる生吹くん。
だけど私の脳内に浮かぶのは、あの日の光景で――
「や、だ……助け、て……っ。
……助けて、生吹くん!!」
まるで地獄の中をさ迷い走っているような徒労感と焦燥感。
そんな私の唯一の光は――生吹くん。
縋るように、私は彼の名前を叫んだ。
すると、