最強王子とフェンス越しの溺愛キス
無事に部屋から、そして建物から出た私たち。
ずっと走ってくれた生吹くんに休んでもらいたくて、私が「少し座っていい?」と提案した。
「ここなら大丈夫か。Moonの奴らがチラホラいるし」
そう言って生吹くんが私を降ろした場所は、建物から少し離れた空き地だった。
客観的に見ると、建物はすごく古い。
窓は割れてるし……いわゆる廃墟。
「(建物の中を移動している時に何となく察していたけど……ここまでだったなんて)」
禍々しい雰囲気の建物に、思わずブルッと身震いをした。
私と真白ちゃんが閉じ込められていたのは三階らしい。
窓がなかったからてっきり地下だと思っていた。
けど不思議なことに……どの階のどの部屋を見ても、窓がない。
「変な建物、だね……」
すると生吹くんは「…っ」と少し言葉を詰まらせた後。
「美月はこんな所、知らなくていいんだよ」と言って、私の隣に座った。