最強王子とフェンス越しの溺愛キス
「……痛い」
どうやら生吹くんは頭を叩かれたらしい。
だけど言葉とは反対に、痛い素振りを全くみせないまま。
先輩に倣うように、生吹くんも立ち上がった。
「遅かったですね。どこか怪我して手間取ったんですか?」
「ねえコイツしばいていい?誰の代わりに今まで乱闘したと思ってんの!?」
「はいはい、純也は黙ってて」
「(わ、わわ……)」
大きな男の人が三人。
言い合いをしている絵面が様になってるんだけど、内容が……
「すみません。”頭を叩かれた衝撃で”失礼な事を口走りました」
「頭を叩いた僕を遠回しに責めてる?言っとくけど、伊織もお前の頭を叩いたからね!?」
「ちょっと、俺を巻き込むのやめてくれる?」
まるで小学生みたいな可愛い内容で……廃墟を前に、少し和む。
「(だけど、この光景。どこかで……)」
すると――すぐに思い出した。
そうだ、真白ちゃんと小太郎くん。二人は夕方、そう言うケンカをしてたんだ。