最強王子とフェンス越しの溺愛キス
俺たちが呑気に空を見上げていると、さっきアジトで会ったMoonの一員が駆け寄ってくる。
「藤堂さん、終わりましたよ!」
「けが人は?」
「小太郎だけです。他はかすり傷ですよ」
「そうか」
そう言って穏やかな表情で笑う藤堂さん。
この人も色々な顔を持っている、そう思った。
「さて、じゃあこのメンツで美月ちゃんの家まで行こうか」
「は?」
つい真顔で反論してしまった俺を、藤堂さんは笑いを堪えながら見た。
「何を勘違いしているのか知らないけど、家に着くまでの護衛だよ。
生吹と美月ちゃんだけだと、何かあった時がね。美月ちゃんを庇いながら戦うとなると、いくら最強とは言え、生吹も心細いでしょ?」
「……」
別に――と思ったのが本音。
だけど今の美月の状態を思うと、人数が多い方が安心するだろうな。
「じゃあ、お願いします」
「す、すみません……」
俺の隣で小さくなって謝る美月。
すぐに白いのが美月の傍に寄り、頭を撫でようとする。