最強王子とフェンス越しの溺愛キス
「総長代理の俺が率いるMoonは温厚派なんだよ。
だけどその実……仲間は抗争したくて、ウズウズしてるけどね」
「……は?」
「今日、アジトを出る時の皆の目を見た?すげーキラキラしてたよ」
目元にシワを寄せて笑う藤堂さん。
ファミレスで一輝はすごい畏まっていたけど、藤堂さんは妙にとっつきやすくて、全く総長に見えない。
人の心をすぐ掴む――その手腕が認められて総長代理に選ばれたのかもしれないけど。
「(手懐け方がエグい……。すぐ懐柔されそうだ。この人、本当に年が二つしか違わないのか?)」
一輝もまるで同じ疑問を抱えていたとは知らない俺に、今まで寡黙を貫いていた白いのが口を挟む。
「だから君が総長代理で正解なんだ、伊織」
「へ?」
「ん?」
その時、ちょうど飛行機の音が聞こえた。
タイミングを図ったような低空飛行の音が、白い奴の言葉を簡単にかき消した。