最強王子とフェンス越しの溺愛キス
そして本当に帰っていく二人。姿が見えなくなる直前に白いのが俺に振り返り、口を動かした。
頼んだ――
そう口が動いたように見えたのは、きっと気のせいじゃない。
「(アイツは、あの事を言ってるんだろうな)」
監禁部屋で美月に聞こえないよう、内緒話をしていた、
あの時――
『それより――君は美月ちゃんを、早く逃がした方がいい』
『……どういう?』
『今は美月の精神状態が正常じゃない。
その理由がこの光景を見たからか、はたまた――薬を盛られたか。もちろん、眠り薬じゃない方のやつ。それを気にしてやって。
あ、もちろん。後者だったら君は気を付けることだ。せいぜい、新島みたく美月を襲わないようにね』
『……ご忠告、どうも』
美月が閉じ込められていた部屋で、美月に聞こえないようにアイツはこう言った。
美月を救出してから結構な時間が経っているから、後者の心配は既に消えた。
残るは――前者。