最強王子とフェンス越しの溺愛キス
血が流れていた、あの時の光景を……美月は両目でしっかりと見てしまった。知らない所に連れてこられて、ただでさえ怖いだろうに、トラウマである血まで。
建物から脱出後、あの美月が「キスして」なんて言ったのも、きっと混乱していたからに違いないだろうな。
『美月ちゃんの心のケア、任せたよ』
『頼んだ』
あの二人に、そこまで心配されるまでに追い詰められた美月の心。そして、そうさせてしまった俺。
「俺と関わったばっかりに、美月は……」
俺の顔に、苦悶の表情が浮かぶ。
だけど、次の瞬間――
「んぅ……、生吹、くん……?」
「うん……おはよう。美月」
美月が目を覚ます。眠たそうな顔は、俺を見て一瞬で吹き飛んだようだった。
「(顔が赤くなってる。可愛いな……)」
美月が状況を整理できない中で、更に混乱させるのは気が引ける。
だけど……
「美月、混乱させるのを承知で言うね。
今日、俺を泊まらせて」
「……へ?」
おぶった状態のまま、少しだけ視線を後ろへ動かす。
すると、更に真っ赤になった美月と目が合った。