最強王子とフェンス越しの溺愛キス
その時の事を、はっきりと覚えてる。
二人でベッドに横になった時、暗がりの中で一回だけ交わした言葉。
『い、生吹くん……あの、後ろからじゃなくて……前から、抱きしめて』
『え?』
『どうしても……。お願いっ』
『――うん』
後ろから抱きしめられるのは、新島の事が頭をよぎってしまって……。
だから、どうしても前から抱きしめてほしかった。
そして、現在。
今も私は、生吹くんに前から抱きしめられたまま。
「(まさか生吹くん、朝までずっと抱きしめてくれていたの……?)」
私が不安にならないように、怖い思いをしないように。
一晩中、ずっと――?