最強王子とフェンス越しの溺愛キス
「……勝手に名前が使われたっていうのに、えらく嬉しそうですね」
「まぁね。グレた幼馴染が無事に更生したかと思うと、感慨深いよ」
「グレてません」
「いーや、あれはどう見てもグレ一輝だったよ」
「(グレいっき……)」
変なあだ名をつけられて不愉快そうな一輝くんに、藤堂先輩はクツクツ笑いながら、ある物を指さした。
「俺が”コレ”を見つけた時も、そうだったろ?」
コレ――
それは、ホワイトボードに貼られている紙。少しシワがあるものの、綺麗な状態だ。
そして、書いてある中身は、
『Moonの総長代理を藤堂伊織に任命する――現Moon総長』
「これを読んだ瞬間、お前は俺に壁を作った。俺をさん付けで呼ぶようになったし、デタラメな敬語も使い始めた。俺は、絶対に”一輝はグレた”って思ったね」