最強王子とフェンス越しの溺愛キス

「な~春風~」

「(はぁ……)」



いい加減、面倒になって来た。

今、俺が興味あるのは暴走族なんかじゃない。

俺の頭にあるのは、



生吹くん、ありがとう――



そうしてはにかんで笑う、美月の顔。



「邪魔、するなよ」

「え?春風、今なんて?」



気づけば、口を開いていた。

比較的ドアに近い席の一輝も、俺の声色が変わったのを聞いたのか、パッと視線を寄こす。

もちろん、タク先輩も。今までの俺とは違う雰囲気に、少し距離をとった。



「俺、本当に暴走族とか興味ないんで。もう勧誘はこれっきりにして下さい。じゃないと――

どうなるか分かりますよね、タク先輩?」

「っ!」

「じゃ、頼みましたから」



今まで先輩だからとニコニコしていたが、どうにも面倒になった。


もしも美月がそばにいる時に、こんな奴が近づいてみろ。

美月は怯えるに決まってる。もしかして泣いてしまうかもしれない。


そんなの、ゴメンだ。



「(美月のそんな姿、想像もしたくない)」


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