最強王子とフェンス越しの溺愛キス


そうして美月ちゃんは、パタパタと走っていく。俺は一拍遅れて「さっき美月ちゃんがソワソワしていたのはトイレを探していたのか」と分かった。

それを瞬時に見抜いた生吹。ちゃんとトイレの場所まで確認しているのも含めて、腹が立つ。



「すげー気に食わねぇんだけど。なんだ、その紳士ヅラ」

「なんのことだよ」



美月ちゃんがいなくなった途端に、生吹はいつもの態度に戻った。

カップに手を掛け、コクリと飲む生吹。



静かだ。



怖いくらいに。




「今日、行くんだろ?夜」

「……」



何で知ってんだ、という目を一瞬した後。生吹は静かに頷いた。



「行くよ、決闘」

「(やっぱり……)」



藤堂さんが言ってたのは、本当だったんだ。今日のケンカに、生吹も参加するって。

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