最強王子とフェンス越しの溺愛キス


今年何歳になるんだっけ。ずっと前に五十歳だったんだから、今年はもう何歳なんだっけ。あぁ、あんなに走って。疲れてるのに、走れるほどもう元気じゃないくせに。



まるでわが子が久しぶりに帰って来たみたいな、そんな反応しちゃって――




「(ダメ、泣いちゃう……っ)」





パッと施設長から目を離す。すると、その視線の先には生吹くんがいて。




「行っておいで」

「っ!」



「いっぱい話したい事があるんでしょ?」

「生吹くん……っ」




まだ迷っている私の瞳を、自分に合わせる。そしてコクンと頷いて――



「ほら、美月」



と、私の背中を押した。

< 335 / 447 >

この作品をシェア

pagetop