最強王子とフェンス越しの溺愛キス
「なぁ生吹、一つ聞いていいか?」
「なんだよ」
「なんか俺に隠してること……ないか?」
「……」
二人の間に、静かな時間が流れる。
「……どういうことだよ」
そう返すと、一輝は肩の力をあからさまに抜いた。
「別に。何でもねーよ」
「……あっそ」
すると、会話の終わりを告げるように、チャイムの音が響く。
「あ、ヤベ。次の授業の課題してねーんだった。
生吹、見せて」
「隣の席の奴に見せてもらえよ。
本当に一輝は孤独なヤンキーだな」
「もう足は洗ったっての」
「どうだか」
キーンコーンカーンコーン
一輝に課題のノートを渡して、窓の外を見る。
「(美月も、今このチャイムを聞いてるのかな)」
まず、向こうA校のチャイムが鳴る。
隣同士だから、丸聞こえだ。
続いて、B校。
キーンコーンカーンコーン
この時の俺は、何も知らずにチャイムを聞いていた。
新島が、何を企み、何をしでかすか――
全く予想が出来ないまま、俺は明日も、美月に会おうと思っていたのだった。
生吹 side end