最強王子とフェンス越しの溺愛キス
「美月、俺も好きだよ。美月の事。一度は諦めようと思ったんだ、美月を好きでいるのを」
「あき、らめる……?」
「うん。でも、出来なかった。出来るわけ、なかった。だって――俺はこんなにも美月の事が大好きなんだから」
「ッ!」
「好きだよ、美月。大好き。俺はどんな時も、いつも美月の事を思ってるよ。
だからね、美月」
お願いがあるんだ――
そう言った生吹くんの、少しだけ揺らめいた瞳。その時に、生吹くんのズボンのポケットから聞こえる、バイブの音。
生吹くんは私の頬に手を添えて、また「美月」と名前を呼ぶ。これから私の元を去るのに、そんなに愛しそうに呼ぶなんて……。
「(残酷すぎる……っ)」
私の好きな人は、残酷だ。
全ての風景や五感をさらって、生吹くんは私に近づいた。いま私の目には、生吹くんしか見えない。音も、生吹くんの声しか聞こえない。
そして、心臓も。
「キスして、美月」
「~うぅ……っ」
もうあなたにしか、ドキドキしない。