最強王子とフェンス越しの溺愛キス
「今ここで俺にキスしてほしい。そうしたら俺は、どんなことだって頑張れるから」
「なに、それ……っ」
まるで気合をいれるような。
もう会えない、最後の別れかのような。
そんな悲しいキスは嫌だ。
「い、や……キスなんて、しないッ」
「っ!」
この時、初めて。
生吹くんの顔が悲しみに包まれる。
「キスしてさよならになるなら、私はキスしないっ。だからずっと、ここにいて……っ」
「美月……」
眉間にシワを寄せて、私を見る生吹くん。すると、一度は治まっていたスマホが、また荒々しく振動し始めた。
生吹くんはチラリと私を見て、そしてスマホを手に取り通話ボタンを押す。
「生吹です。はい、もうすぐそちらに」
「!」
生吹くんが敬語で話すなんて――知っている人物は、ただ一人。