最強王子とフェンス越しの溺愛キス
「~!」
「っ、は」
先に声が漏れたのは生吹くんの方で。電話の向こうで藤堂さんが「生吹、走ってる?」と不思議そうに尋ねる。
「はい、バイクまで急いでます」
ちゅっ
「……っ!」
会話の合間を縫って、私の口に器用にキスを散らす生吹くん。私は声が漏れないように、必死になってキスを受け入れた。
すると聞こえる、藤堂先輩の声。
――「でも、本当にいいのか?」
「何がですか?」
――「今夜だよ。決闘。生吹の初参加には申し分ない、血生臭いケンカになりそうだよ」
「(うそ……っ!)」
聞いてしまった、聞こえてしまった。まさに今夜が、その時なんて。