最強王子とフェンス越しの溺愛キス


「~!」

「っ、は」



先に声が漏れたのは生吹くんの方で。電話の向こうで藤堂さんが「生吹、走ってる?」と不思議そうに尋ねる。



「はい、バイクまで急いでます」



ちゅっ



「……っ!」



会話の合間を縫って、私の口に器用にキスを散らす生吹くん。私は声が漏れないように、必死になってキスを受け入れた。


すると聞こえる、藤堂先輩の声。




――「でも、本当にいいのか?」

「何がですか?」



――「今夜だよ。決闘。生吹の初参加には申し分ない、血生臭いケンカになりそうだよ」

「(うそ……っ!)」




聞いてしまった、聞こえてしまった。まさに今夜が、その時なんて。


< 356 / 447 >

この作品をシェア

pagetop