最強王子とフェンス越しの溺愛キス
「待って!生吹くん、待ってよっ!」
今更この罠に気づく自分に嫌気をさしながら、必死にガシャガシャとフェンスを揺する。
生吹くんは既にバイクに跨っていた。そしてエンジンをふかす、その直前――私に振り返った。
そして、
「美月、大好きだよ」
「いっ、」
ブオオォォォン――
私の返事を聞かず。私の言葉さえも耳に入れないまま――生吹くんはエンジンをかけ、ついに私から去ったのだった。
どんどん遠ざかる背中を、私はただ見守ることしかできない。
何も出来なかった。何も、止めることが出来なかった。
生吹くんの「私を守る」という信念も、私たちは付き合わない方がいいと結論づけた決心も、これからケンカをしに行くという衝動も――私には、何一つ止められなかった。