最強王子とフェンス越しの溺愛キス



「バカだ……私、何も変われてないよ……っ」




ガシャンとフェンスを握る。行き場のない感情をぶつけるように、ガシャガシャとフェンスを揺らした。





「生吹くん、会いたい。行かないで……っ」




私の消え入りそうな声は、ガサッと、後ろから聞こえた音によりかき消される。振り返ると、そこに立っていたのは私と同じように辛そうな顔をするお母さんだった。




「美月……春風さんは、行ったの?」

「帰っちゃった……行っちゃった……もう私、生吹くんと会えないかもしれない……っ」




これから血生臭いケンカに行くんだって。全部私を守るためなんだって。一人で全部決めて行っちゃった。私は、何もいう事が出来なくて――


お母さんに全部言いたいのに、声にならない。嗚咽が漏れる私の背中を、お母さんが優しくなでてくれた。




「さっきね、料理を運んでくれた時に春風さんに言われたの」

「生吹、くんに……?」




それは、料理をキッチンに運んでいる間の事だったという。

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