最強王子とフェンス越しの溺愛キス
『折り入って、お願いがあります』
『お願い?』
『実はこの後、用事がありそっちへ行くのですが……美月さんが嫌がる事です』
『ひょっとして、ケンカ?』
『なんで知って、』
『この施設の近くに、昔からケンカで使われる場所があるのよ。ふふ、春風さん、意外にヤンチャなのねぇ』
そう言うと、生吹くんは困ったように眉を下げて笑ったらしい。
『美月さんは絶対に俺を止めると思います。だけど反対に俺は、絶対に付いてきてほしくない。だから――』
「だから、美月が門の鍵を開けてくれてって言っても、絶対に許さないでほしいって。そう言われたのよ」
「生吹くんが、そんな事を……」
そうか、だからあの時。私を外に一人残したんだ。お母さんに協力を仰ぐために。
「生吹くんに近寄るには、罠が……多すぎるよ……っ」
ポロポロと涙が流れる私を、お母さんはまた「よしよし」と宥めてくれた。