最強王子とフェンス越しの溺愛キス



『折り入って、お願いがあります』

『お願い?』



『実はこの後、用事がありそっちへ行くのですが……美月さんが嫌がる事です』

『ひょっとして、ケンカ?』



『なんで知って、』

『この施設の近くに、昔からケンカで使われる場所があるのよ。ふふ、春風さん、意外にヤンチャなのねぇ』




そう言うと、生吹くんは困ったように眉を下げて笑ったらしい。




『美月さんは絶対に俺を止めると思います。だけど反対に俺は、絶対に付いてきてほしくない。だから――』




「だから、美月が門の鍵を開けてくれてって言っても、絶対に許さないでほしいって。そう言われたのよ」

「生吹くんが、そんな事を……」



そうか、だからあの時。私を外に一人残したんだ。お母さんに協力を仰ぐために。



「生吹くんに近寄るには、罠が……多すぎるよ……っ」



ポロポロと涙が流れる私を、お母さんはまた「よしよし」と宥めてくれた。


< 361 / 447 >

この作品をシェア

pagetop