最強王子とフェンス越しの溺愛キス
「俺が春風生吹だ」
「は……はあ?お前?ケンカのケの字も知らなさそうな奴がぁ?」
「――ふ」
生吹の横顔が見える。その口は弧を描いているが。俺はなぜか「生吹は今キレてる」と分かってしまった。
ってかアイツ、デートの服のままで決戦場に乗り込みやがって。そのオシャレコートどうするんだよ、中の服も汚れたらどうするんだよ。
「おい小太郎、生吹のコートと特攻服、取り替えてこい。あれじゃ示しがつかねぇよ」
「は、はいッス!」
そして一着の特攻服を持った小太郎が走りだそうとした、その瞬間――
バキッと、音が鳴る。
その音は、この場の静寂を切り裂く閃光のように轟いた。そして決闘の開始を告げる、決定的瞬間となる。