最強王子とフェンス越しの溺愛キス
「ぅがあ!!?」
え……小太りな男、どこまで飛んだ!?全然目で追えないスピードで吹っ飛んでいったから分からなかった。
それに、生吹はなんだ?さっきと全く態勢が変わっていない。ただ、突っ立てるだけだ。
いつ……蹴ったんだ?
「(……っゴク)」
思わず、生唾を呑み込んでしまう。蹴った姿も、蹴られた対象も見えなかったなんて初めてだ。
普通に話している時のアイツからは想像もできない強さ。これが、
最強――
その最強が、一同に畏怖の念を与えた後。ユラリと瞳が揺れた。
「……」
「(生吹……?)」
その目は、こんな状況だというのに、なぜか憂いを帯びていて。思わず、肩の一つでもポンと叩きたくなるほどだ。もちろん、今は絶対しないが。