最強王子とフェンス越しの溺愛キス
そして場を離れて、相手の陣地へ――といっても、決闘が始まったばかりだから、動ける者の数が多い今は安易に敵地へ近づけない。
しかし、だんだんと日が傾いてきて視覚が鈍くなってきている今、ある程度までは近寄らないとLunaかMoonかも分からなくなってくる。
「俺は敵地を観察するから、背中任せたぞ」
「うッス!」
やる気十分な声を聞いて、気を引き締める。小太郎は全快したものの、前Lunaや新島にボコられた時の傷が薄っすらと残っている。たった一人で複数人にやられて……。痛くて怖かったろうな、と思ってしまう。
「今日は勝つからな、小太郎」
決意したように言うと、小太郎は「ッス!!」と満面の笑みで答えたのを背中で感じた俺は――――目の前に影がある事に、全く気が付いていなかった。