最強王子とフェンス越しの溺愛キス
「ギャッ痛ぃ~!!!!」
ちょろい、これで小太郎の所へ行ける。
俺は焦る気持ちを押さえつつ、紫野郎の横を通ろうとした――その時だった。
「はい、残念ッ♪」
紫野郎が、光る何かを握っているのが見えた。そしてそれは、一直線に俺の足へと伸びてきて、
「(ヤバい!注射だ!!)」
そう思って逃げようとした、が――一瞬だけ遅く。俺の足は固定され、針の切っ先がすぐそばまで寄る。
「いい夢見てねェ~?♪」
「!?」
紫野郎がニタリと笑った、その時だった。
「伊織!!」
ゴキッと不穏な音がした後に、紫野郎が「あがッ!?」と言いながら吹っ飛ぶ。地面を擦る音がした時に、紫野郎の手が変な方向に曲がっているように見えたが、気のせいか……?
だけど、考えている暇はない。今、誰が俺を助けた?
そう思って顔を動かした。そして……思いっきり舌打ちをする。
「チッ、なんでここにいるんだよ――
一輝」
睨む俺を、睨み返す一輝。その口から「あんたこそ何してんだ」と、怒気を含んだ声が返って来た。