最強王子とフェンス越しの溺愛キス
「そいつは違う。黒幕じゃない」
「へ?」
「は?」
生吹は言った。この紫野郎は、黒幕じゃないと。
「え、じゃあ、誰だ……?」
他にもいるってのか?じゃあ、それはどこに――
そう考えていた時だった。
「見ぃ~つけたあ~」
Moonの方から声がする。だけど、その声は明らかにMoonには場違いだった。
だって、ソイツは――
「見つけたぜぇ?生吹ぃ?」
「遅い登場だな、新島――」
いまだ顔に包帯を巻いている新島が、手にナイフを持って立っていたのだった。
瀕死――と紫野郎が言っていたが、それは本当らしい。よく見れば、体中が包帯だらけだ。まるでミイラだ。
「兄貴が世話になったみたいだなぁ~?」
「胸糞悪い喋り方は健在らしいな」
俺と一輝の後ろにいる新島を、ギロリと見る生吹。その目は、鋭くも冷静だ。