最強王子とフェンス越しの溺愛キス
――初めまして~!私、真白(ましろ)っていうの!
――た、立花美月、です……?
「美月に話しかけるまで、毎日メイクやファッションの勉強をした。春から冬まで。
元々族に積極的に顔を出してなかったおかげで、直ぐに総長不在になった。けど、美月に会えた時点で俺にとって暴走族は二の次になったから、ちょうど良かった。元々は、美月に会うために作った族だったから。
だから総長代理を設けた。Lunaの方は、新島のせいで失敗しちゃったけど」
言うと、伊織が遠くで「おーい」と声をあげる。
「総長不在でMoonが安寧な日々を送ってるとでも?」
「俺の目には、そう写ったよ」
伊織は眉間に皺を寄せながら、「理由が理由だから叱れない」とポツリと漏らした。そう、そういう所なんだ。俺が伊織を総長代理に決めたのは。
少し前。廃墟の建物で新島をこっそり瀕死に追い込んだ夜――伊織が生吹に、こう話していたのを覚えている。