最強王子とフェンス越しの溺愛キス
『俺はね、仲間の楽しそうな顔を見たら、怪我をさせるのが可哀そうになるんだよ。まあ、親みたいな心境だな。総長として情けない限りだけど。
でも、抗争がなく平和に二分化が維持できるなら、それに越したことはないってね』
『だから君が総長代理で正解なんだ、伊織』
あの時は、飛行機の音に邪魔されて伝えられなかったけど。今なら、言えそうだ。
「総長代理お疲れ様、そしてありがとう。伊織。お前の月は、俺の目にすごい綺麗に見えた。総長不在でありながらMoonが解体の危機に陥らなかったのは、伊織のおかげだよ」
「……」
口をへの字に曲げて、伊織は納得いかないようだった。まあ、そりゃそうか。
自業自得だ――と思っていた、その時。
「メールだけの謝罪だったら、縁を切ってたからな」
「……さすが。情に厚いね」
ふふと笑うと、伊織は今度こそ、そっぽを向いてしまった。俺はもう一度「ありがとう」と礼を言い、生吹に向かい合う。