最強王子とフェンス越しの溺愛キス
「……ずっと美月を追っていた俺からすれば理解しかねるけど」
純弥先輩が吐き捨てるように言う。
「お前の考えを美月が拒否するなら、俺は絶対にやられるわけにはいかない。例え相手が美月の想い人でも、手加減なしだ。俺は、死んでも膝をつかないよ」
「……」
生吹くんと純弥先輩が、静かに間合いを詰める。二人の距離はだんだんと近くなっていき、そして――
「俺が最強と言われてるのを知ってるか?」
「武術を会得した俺の強さを知ってるの?」
バキッ
始まりは突然だった。二人の拳がお互いを捉える。殴って、蹴って。そして痛めつけた。
純弥先輩が強いというのは本当らしく、何度も生吹くんに拳を浴びせている。生吹くんは防戦一方の雰囲気を出しながら、足を素早く使い反撃に応じていた。
五分五分。
勝敗の行方は誰も分からない。
ここにいる皆が、ただ静かに、息を呑んで二人の決闘を見守っていた。