最強王子とフェンス越しの溺愛キス


「噂なんてほっとけばいい。
だから美月は、ずっと笑っていて」

「生吹くん、」



すると、その瞬間。

頭を撫でていた生吹くんの手は、お弁当を支える私の手にツツ…と降りてくる。

そして、キュッと。

私の手を、上から握り締めた。



「(冷たい、けど……あったかい)」



一見スラリとした手に見えるのに、握られると分かる、生吹くんの手の大きさ。

指の一本一本が長くて、私の手なんて簡単に呑まれてしまう。



「……ね、美月」

「は、はいっ」



妙な緊張感が、私を襲う。

生吹くんも私も、お互いがお互いを見ないまま。

だけどお互いの存在を、これでもかというほど感じながら――私たちは視線を交わした。


< 49 / 447 >

この作品をシェア

pagetop