最強王子とフェンス越しの溺愛キス


すると、生吹くんが口にしたのは予想外の事だった。



「笑ってる美月、可愛いかったよ」

「え……?」

「ごめん、スマホを操作してる時に見ちゃったんだ。背景の写真」

「(あぁ、そうだった)」



私のスマホの背景は、家族写真。
私とお父さんとお母さん。

交通事故でいなくなった、私の両親。



「両親は事故で他界してて……。
だから、お守りみたいなものかな」

「お守り?」

「今日もいい事ありますようにって、写真を見る度にお願いしてたの。

だけど……。

今日から別のお願いに変えようかな。
”もっと笑えますように”って」

「美月……」



生吹くんに優しく頭を撫でられる。素直に嬉しくて心地よくて、思わず「へへ」と声が漏れた。



「(生吹くん、写真の事を聞いてくれてありがとう)」



両親の事を誰かに話した事は、ほとんどなかった。だから、こうやって喋れる事が、とても嬉しい。


すると、



「――叶うよ」

「え?」



突然、生吹くんはそう言った。
優しい瞳を私に向けて。穏やかな顔で。


< 50 / 447 >

この作品をシェア

pagetop