最強王子とフェンス越しの溺愛キス
「へぇ、早かったなぁ」
「(な、に……?)」
倒れた体を起こす気力は湧かなくて……。
視線だけを動かしてみる。
すると、
「(きれいな……満月……)」
開かれた扉から、惜しみなく降り注ぐ月光。
ここが倉庫みたいな所なんだと、月明かりを頼りに今、初めて知る。
そして、その満月を背負うようにして立つ――その人。
「(あぁ……なんで、どうして……っ)」
見えてしまった。見てしまった。
その人の姿を、この状況で。
絶望から希望をくれたこの人を、この瞬間を――私はきっと、生涯忘れない。
「生吹くん……っ」
倉庫の奥にいる私。
か細くしか出ない声は、それでも、遠くにいる生吹くんの耳にしっかり伝わったようだった。