最強王子とフェンス越しの溺愛キス
「え、あ……っ」
雲に隠れていた満月が、徐々に顔を出す。
すると、月光が倉庫に足を延ばし、奥にいる私たちにまで届いた。
そして、露わになる――その人の顔。
「遅れてごめん、美月。怖い思いをさせた」
「い、生吹……くん……っ」
生吹くんは、一瞬で私と新島の所まで来て、そして新島を蹴り飛ばしたらしかった。
あの暗闇の中で、どうやって……?
「生吹く、なんで……っ」
疑問に疑問を重ねた私の言葉を、生吹くんはそっと仕舞うように、私の頭を撫でた。
「ん、あとで話そう。美月。今はちょっと忙しい」
「あ……っ」
周りを見ると、新島の仲間――Lunaという暴走族の集団が、私たちを取り囲んでいた。
新島は、誰かに支えられて立ち上がろうとしているのが見える。
「ここは任せて。美月は一輝とここを離れて」
「で、でも、生吹くんは、」
「大丈夫だよ」
ニコリと笑う、その顔が。
なんだか、もう一生会えなくなる気がして……
ダメだと思いながらも、ブンブンと首を横に振った。